農地リノベーション

農地を使い続けるためには、耕作放棄地を開墾したあと、復旧した農地をどう活用していくかが肝要です。農家や新規就農者、事業者に引き渡し、営農してもらえればいいのですが、離農者が多い昨今、その他の活用方法が求められています。

貸農園にする、ソーラシェアリングの場とする等、様々な取り組みが行われていますが、私たちは、一市民でもできる、お金や労力の負荷があまりかからず無理なく使い続けることができる身の丈の農地の活かし方を模索しています。目指すのは、市民による農地リノベーション(改革、刷新)=「Re農地」です。

◎Re農地 事例

みかん畑教室や畑で実践デイの会場となるのは、2ヘクタールのミカン園。数年手がはいらず藪となっていた土地を、素人ばかりの仲間達で開墾を始めたのが2016年。雑木を伐り、藪をとりはらい、やがて石垣があらわれ、段々畑ができ、少しづつ当時の風景がよみがってきました。段々畑では少量ですが小麦を栽培し、近くのパン屋さんで使ってもらっています。裏山で間伐した木で、階段やベンチも作りました。

◎活動の様子

※参加をご希望の方はこちらをご覧の上、お問合せください。

【畑チーム】

段々畑の斜面に10箇所、100㎡の畑をつくり、地形や条件に合わせて、色々な野菜を色々な農法で試しています。イモ類、葉もの、エンドウマメ、カボチャ、トマトなど約10種類の野菜を栽培しています。農薬や化学肥料を使わず、農地の剪定枝や草刈り後の草を発酵させた堆肥、焼却灰などの有機たい肥です。

【開墾】

耕作されず数年たつと、農地は鬱蒼とした藪となります。2-3mの雑木、背丈ほどに伸びた草々、ツタやツルに覆われた藪中を草刈り機やチェーンソーで果敢に攻め込む開墾。土地や植生の状況にあわせ幾種類もの草刈り機を使い分け、地形を読み、道なき道を拓きながら進み視界が開けたときの爽快感は格別です。

【草刈り】

草刈りは農作業の大半を占める作業。どうしたら、効率的に草が刈れるでしょう。鎌を使いこなす身体の使い方や、植生や地形に応じた草刈り機の使い方を教えてもらいながら、実践をつみます。草刈りは単なる作業ではなく、生物多様性や遷移とも関わる農の本質であることも体験を通して気づいてゆくでしょう。

【果樹栽培】

農地には、地主さんが栽培していた甘夏、八朔、ニューサマーオレンジ、温州ミカン、ゆず、レモン等柑橘、梅、ブルーベリーなどの果樹があります。剪定、草刈り、有機たい肥の施肥等、各技術を学習しながら、栽培を行っています。

【ビオトープづくりと生物観察】

“ぬたば”を整備しビオトープとしました。水辺には多様な生物や植物が集住するそうです。オタマジャクシ、オニヤンマ、サワガニ、水生昆虫の餌となるイトミミズの生息を確認。生物多様性の宝庫です。周辺を電気柵で囲ったことで、アライグマの餌食になるカエルの産卵に成功しました。このような環境保全のモデルを作っていければと思います。

【獣害柵作り】

イノシシやはくびしんなど野生動物が出没します。電気柵、フェンス柵、木杭にネットを張った柵と3種類の獣害除け柵を設置しました。各々がどのような効果を生むか、どんな課題があるかの試行をしています。

【石垣補修】

耕作放棄による整備不足や獣害被害により石垣が崩壊していく状況にあります。石垣が崩れるということは農地の基盤が壊れる甚大な問題でもあります。美しい石垣風景を保全できるよう、石垣の補修や再積を行います。

【全体農地計画】

景色のよさを堪能するデッキを作りたいね、美味しい珈琲を飲めるあおぞらカフェもいいね、星のきれいな夜には野外映画会もしたいね。ここに生育する在来種の草花のお花畑が季節ごとに楽しめるといいね、など夢を描きながら現在も復旧の途上です。関わる人のアイデアや技能を紡ぎながら、農地の新しい形を創っていければと思います。